総合診療とは
「総合診療」とは、どのような問題にもすぐに対応し、家族と地域の広がりの中で、疾患の背景にある問題を重視しながら、病気を持つひとを人間として理解し、からだとこころをバランスよくケアし、利用者との継続したパートナーシップを築き、そのケアに関わる多くの人と協力して、地域の健康ネットワークを創り、十分な説明と情報の提供を行うことに責任を持つ、総合診療医によって提供される、医療サービスです。
よくトレーニングされた「総合診療医」は、健康問題や病気の約8割を占める「日常よく遭遇する状態」を適切にケアすることができ、各科専門医やケアに関わる人々と連携し、患者の気持ち、家族の事情、地域の特性を考慮した、エビデンスに基づく「患者中心の医療」を実践できる能力を有するといわれていますが、日本では「総合診療医」養成のための教育システムが未だ充分に整備されていません。しかし、医師偏在・医師不足が社会問題となっている現在の地域医療において「総合診療医」の役割が注目されつつあります。
「総合診療医」は、実は、当ホームページで長年用いてきた愛着のある用語「家庭医」と同義語です。新たな専門医制度の基本領域の中で一番あたらしい19番目の専門領域として、2018年度から「総合診療科」が新設されました。当院の研修プログラムで用いてきた呼称「家庭医」が、わが国では正式には「総合診療医」と呼ぶことになりました。
ところで、何故いま総合診療医が求められるのでしょうか?「総合」というからには総合的に診ることができる医師ということですが、この「総合」の本当の意味を知ると、総合診療医の役割と必要性がすんなり理解できると思います。
最初の「総合」は、「患者を多角的に診る」ということです。多くの人が健康上の不安や課題、特性をいくつも抱えながら生きるこの時代。患者を360度診られる幅広い知識と視野が必要です。ひとつの臓器にとどまらず、それぞれが影響する関係や原因を推論できる高い診断能力と、他の診療科との円滑な連携を見極める力が求められます。
次の「総合」は、「家族・生活背景まで診る」ということです。病には、背景があります。日常生活における心理的な悩みを抱える人も増えるなか、家族の関係性や職場の環境など、病の根っこにアプローチする医療が求められています。患者個人の治療はもちろん、その生活を支える家族もまるごとケアします。良き伴走者として、医療・福祉専門職だけでなく、学校、職場とも連携し、患者の暮らし方に合わせてコーディネートします。
最後の「総合」は、「地域全体を診る」ということです。慢性疾患を抱えながら一生を終えるひとが6割ともいわれる今、病や障害とともに生き抜く時代がきています。医療の守備範囲は、保健や福祉、介護にとどまらず、住宅環境や働き方、まち全体の行政計画にまで広がっているのです。住民の医療ニーズを把握し、それを地域に反映する力が求められます。
このような能力を備えた19番目の専門医が「総合診療医」であり「家庭医」なのです。
当院における総合診療への取り組み
①家庭医療セミナーinいわき「実践家庭医塾」
福島県立医科大学 医学部 地域・家庭医療学講座では、 すでに地域で医療を実践している先生方を対象とした家庭医療生涯教育プログラム「実践家庭医塾」を開講しています。興味のある方はぜひ御参加下さい。
- 会場:
- かしま病院コミュニティーホール
- 日時:
- 各月1回開催 いずれかの木曜 19時~(1時間程度)
- 参加お申し込み先:
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社団医療法人養生会 かしま病院 「地域医療連携室」 担当:井沢(いざわ)
TEL:0246-76-0350 FAX:0246-76-0352
②福島県立医科大学 医学部 地域・家庭医療学講座 後期研修協力病院
2008年度から専攻医の研修受け入れを開始し、多くの研修医らが楽しく学んでいます。また、福島県立医科大学 医学部 地域・家庭医療学講座教官が 直接外来指導、評価とフィードバックを実施しています。
山海の幸豊かないわきで、総合診療医としての第一歩を踏み出してみませんか。施設見学も随時受け付けています。
- 問い合わせ先:
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社団医療法人養生会 かしま病院 「地域医療連携室」 担当:井沢(いざわ)
TEL:0246-76-0350 FAX:0246-76-0352