病理・細胞診部門は、患者さんから採取された臓器や組織を対象とし、肉眼および顕微鏡で観察してどのような病気であるのかを調べる部門です。
大きく分けて“病理組織検査”“細胞診検査”があります。
病理組織検査
針生検や内視鏡検査などで採取した生検材料や手術で摘出された組織を調べます。
臨床検査技師が検体を処理し(※検査の流れを参照)、顕微鏡で観察できるよう標本を作製します。
病理医は肉眼的観察と顕微鏡的観察を行い、病気の有無や広がりなどを診断します。さらに治療方針や治療効果の判定なども行います。
診断結果は主治医に報告され、主治医は患者さんに病態を説明し治療が始まります。
検査の流れ
- 医師が患者さんから組織を採取します
- 採取した組織をホルマリンで固定します
- 固定後、手術材料など大きいものはカセットと呼ばれる 横30㎜×縦25㎜×深さ5㎜ほどの容器に入るような大きさに切り出した後、自動包埋装置と呼ばれる機械でカセット内の組織にパラフィン(ロウのようなもの)を一定の時間をかけて浸透させていきます
- パラフィンブロック※1を作製します(“包埋”と呼ばれる作業です)
- パラフィンブロックから3~4μmの厚さの切片を切り出します(“薄切”と呼ばれる作業です)
- 切片をスライドガラスに載せてよく伸展させます
- ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)を行います(必要に応じ、特殊染色や免疫染色を行うこともあります)
- 封入剤を用いてスライドガラス上の組織表面をカバーガラスで覆い(“封入”と呼ばれる作業です)、乾燥させます
- 病理医が標本を顕微鏡で観察し診断書を作成します
- 主治医に報告します
細胞診検査
尿や痰のように患者さん自身が排泄したものや、乳腺・甲状腺・子宮頸部などから針や専用のブラシなどを用いて採取した細胞に癌細胞が混じっているかどうかを調べます。
細胞診検査は組織検査に比べて検体採取の際の侵襲が少なく、操作も迅速・簡便で、採取日当日の鏡検が可能です。
検査ではまず臨床検査技師が顕微鏡で観察できるように標本を作製します。その次に細胞検査士という資格を持った臨床検査技師が顕微鏡で標本の端から端まで観察し異常な細胞を見つけ出します(“スクリーニング”と呼ばれる作業です)。
何も異常がなければ報告書を作成します。異常な細胞がある場合、さらに細胞診専門医という資格を持った医師が良悪性の診断を行い報告書を作成します。
検査の流れ
- 患者さんから検体を採取します
- スライドガラスに検体を塗抹します
※ 喀痰などの剥離した細胞はスライドガラスに塗抹し、液状検体は遠心して細胞を集め、これをスライドガラス上に塗抹します - 直ちに95%アルコールで固定あるいは乾燥固定を行います
- パパニコロウ染色やギムザ染色を行います
- 封入剤を用いてカバーガラスで封入します
- 細胞検査士がスクリーニングを行います
- 細胞専門医が診断を行います
- 報告書を作成します
- 主治医に報告します
【胸水の検体処理の様子】
遠心して細胞を集め、採取した細胞をスライドガラスに滴下します(写真①,②)。滴下した検体を均一に塗抹し(写真③)、アルコールで固定します(写真④)。
【子宮頸部の細胞像】
赤丸部分はHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が疑われる細胞
コンパニオン診断
近年、医薬品の効果や副作用を投薬前に知るために“コンパニオン診断”と呼ばれる検査が行われています。コンパニオン診断によって薬剤に対する患者さん個人の反応性を治療前に予測することができます。
検査材料には癌組織の生検、手術臓器、体腔液、気管支洗浄液などが用いられており、検査方法は免疫組織化学、FISH、RT-PCR、フローサイトメトリーなどがあります。
当院では、肺癌・乳癌・胃癌・大腸癌などの悪性腫瘍におけるコンパニオン診断を外注検査にて実施しています。